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2022 Alltech Harvest Analysisの結果及び 『2023 アジア輸入原料カビ毒リスクレポート』を公開。 アジア地域に供給される各種輸入飼料原料のカビ毒リスクが明らかに。

 

[米国ケンタッキー州レキシントン] – オルテックは、各飼料原料の主要収穫地において当年の収穫物のカビ毒混入レベルを調査する恒例の『Alltech Harvest Analysis(オルテック収穫物分析)』を、2022年の第4四半期に実施しました。そしてそれらの収穫物の多くを輸入するアジア地域の立場からまとめられた結果報告レポートが、『2023アジア輸入原料カビ毒リスクレポ―ト』です。

オルテックの世界飼料調査(アグリフードアウトルック)によると、アジア太平洋(APAC)地域における配合飼料製造量は増加を続けており、調査を開始した2012年の製造量は3億5000万トンほどでしたが、2023年1月に結果が公開された最新の調査(2022年の製造量)では、4億6500万トンと試算されています。この5億トンにも迫る飼料の製造のため、大量の穀物原料がヨーロッパや北南米から輸入されていますが、長距離輸送や変化の激しい保存環境は輸入穀物のカビ毒リスクを大幅に高めます。このことを念頭に置き、アジア地域の畜産生産者には、輸入原料が自国内の飼料製造の過程においてしっかりとした品質管理下に置かれることを確認しつつ、同時に自らも輸入原料の生産国でのカビ毒発生状況の把握に努めることが推奨されます。

そこで、アジア各国の飼料原料の輸入・加工関係者、そしてそれらの原料を含む飼料を使用する畜産生産者に対し、特にカビ毒混入にフォーカスした輸入原料品質情報を提供するため、本年も『アジア輸入原料カビ毒リスクレポ―ト』が作成され、タイ、バンコクで開催されたVIV Asiaにて現地時間3月8日に公開されました。

『2023アジア輸入原料カビ毒リスクレポ―ト』はhttps://go.alltech.com/asia-import-risk-analysisより英語版がダウンロード可能です。日本語版冊子の提供もございますので、ご希望の場合はオルテック・ジャパン合同会社までお気軽にお問い合わせください。(Eメール:japan@alltech.com)
以下に本調査結果概要をお知らせいたします。

 

【2022 Alltech Harvest Analysisの結果概要】

◎本調査に用いられた分析方法について
地域及び調査対象により、カビ毒分析の方法を変えています。用いられた方法は次の通りです。

・ オルテック37+ LCMS-MSをベースとした方法で、穀物、牧草、飼料中に含まれる最大54種の各カビ毒を特定し、その濃度を測定します。
・ オルテック ラピリード:  ラテラルフロー法をベースとした方法で、穀物や牧草中に含まれる主要6種のカビ毒の混入の有無を迅速に判定し、その濃度を示します。

また、カビ毒検査の頑健性を高めるため、ヨーロッパ地域においては世界最大級の検査認証機関であるSGSとパートナーシップを組み、中央及び東南ヨーロッパ地域産トウモロコシのカビ毒分析を行っています。

◎収穫地別調査結果概要

・ ヨーロッパ
今回も干ばつの影響が結果に表れました。収穫量は大幅に減少し、中央及び南部ヨーロッパ地域産のコーン種実及びコーンサイレージのアフラトキシンレベルが上昇していました。ハンガリー、セルビア、ルーマニア等で採取されたコーンの検体の多くが、EUが飼料に設定している20ppbというアフラトキシンの基準値を超えていました。このレベルのアフラトキシンを含む飼料を乳牛が摂取した場合、乳中にアフラトキシンが移行することがあり注意が必要です。

小麦及び大麦に関しては、採取されたサンプルの全てにカビ毒が含まれていたものの、コーンのサンプルに含まれていたカビ毒レベルと比較するとはるかに低いものでした。小麦及び大麦のサンプルには平均3.7種のカビ毒が含まれていました。コーンサイレージやグラスサイレージなどのサイレージ類に関しては、全般的にペニシリウム属のカビ毒が確認され、リスクレベルも高めでした。デンマーク産のワラにはタイプBトリコテセン類にカビ毒が高レベルで 確認され、特にこれらをアニマルウェルフェア改善の目的で寝藁などに用いる養豚生産者には注意が必要です。

・ アメリカ合衆国
米国産コーンサイレージ及びコーン種実は400検体以上が分析され、その結果カビ毒リスクの分布パターンは、天候パターンと共に移り変わっていることが見て取れました。例えば、西から東に向かって湿潤な天候が移動していた場合はそれに合わせてカビ毒リスクも上昇していました。サイレージ検体に確認された主要なカビ毒は新興カビ毒であるタイプBトリコテセン類でした。一検体あたりの平均検出カビ毒数は7.3でオルテックのリスクスコア(リスク等価、REQ)による評価では、対象が乳牛又は肉牛であった場合のリスクレベルは中程度でした。コーンのサンプルは全般的に類似したカビ毒混入パターンを示し、リスクレベルは多くの畜種にとって比較的高いものとなりました。コーンが呈したリスクの原因のほとんどがデオキシニバレノール(DON)由来で、その平均濃度は1,700ppbほどでした。

アメリカで実施された調査結果で興味深かったのは、収穫時期の違いによるカビ毒レベルの差でした。例えば、11月に収穫されたコーンからは、10月に収穫されたものの約2倍ものDONが検出されました。このことから、今後数カ月の間買い付けやカビ毒スクリーニングを行う際には、そのコーンがいつ収穫されたものであるかを認識しておくことが有用であると言えます。

・ カナダ
過去数年にわたり収穫不良に悩まされてきたカナダですが、2022年は豊作となりました。今回のカナダでの調査は大規模なものとなり、各州常駐のオルテックスタッフ、オルテックグループ Masterfeeds社のネットワーク及びオンタリオ州のStratford Agri Analysis社の協力を得て、800もの検体を検査することができました。カナダで最も多く検出されたのは、DON、ゼアラレノン、そしてT-2 /HT-2トキシンで、いくつかの州では牧草中からアフラトキシン類が検出されています。その他の地域と同様に、小麦及び大麦のサンプルのリスクレベルは低めでしたが、DON及びゼアラレノンが検出されたケースでは、特に豚に対してはリスクを呈するようなレベルで確認されることもありました。マニトバ州で収穫されたコーンは50%以上にゼアラレノンが確認され、またオンタリオ州では85%からDONが検出されており、平均濃度も比較的高いものでした。大麦サイレージやコーンサイレージ等の牧草類からは広く高レベルのカビ毒が検出され、またオンタリオ州やケベック州でも平均して高レベル(平均1,846~1,992ppb、最高10,399ppb)のDONが確認されています。

・ インド
大いに豊作が期待されたインドでしたが、収穫の時期を迎えると、期待とは裏腹の結果が明らかとなりました。肥料の供給不足、非常に多量の降雨、そして病害等の影響で雨季(ラビ)、カリフ(乾季)のいずれの収穫量も少なく、また収穫物の質も低くなりました。ラビ及びカリフのいずれの収穫物も、80%以上のサンプルから好適な水準を上回る数のカビが確認され、このカビ発生頻度の高さは、カビ毒分析結果にも反映されていました。インド産コーンの分析はオルテックラピリードを用いて実施され、アフラトキシン、DON、ゼアラレノンが検出されました。ラビ、カリフの両収穫期産コーンの検体はいずれも複数のカビ毒を含んでおり、対象を採卵鶏とした場合の総合REQ評価は中程度となりました。

・ オーストラリア
生育期の気候が良好であったため、オーストラリア南部及び西部のいずれでも過去二番目の豊作を記録しました。しかし残念ながら東部の州では後半の降雨と洪水、冷温の影響で、収穫物については、概ね収穫量が減少し、タンパク質含有量も検査重量も少ない結果となりました。 水分含有量の多い穀物は貯蔵中のカビ発生可能性が高くなります。2021年の検査結果と比べて、2022年のゼアラレノン、DON、アフラトキシンの収穫時検出レベルは顕著に高いものでした。洪水の影響で牧草の収穫量は大幅に減少し、夏季の植え付け開始が遅れました。過剰な水分により牧草の質が下がり、カビ毒、特にゼアラレノンの脅威が高くなっていました。牧草及びサイレージの多くにはカビが多く目視でき、カビ臭もしていました。ただし、カビが目視できないような牧草やサイレージ検体にも高いレベルでカビ毒が確認されました。この地域産の穀物や牧草を使用する際には、しっかりとしたカビ毒検査の実施が推奨されます。

REQとは: 検体中の全カビ毒の毒性をアフラトキシンBに換算し、総合的なカビ毒リスクを表現する指標

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